
訪日外国人の増加により、博物館でも「多言語対応」のニーズが高まっています。
しかし実際の現場では、
- 英語だけで十分なのか?
- 展示の専門用語をどう翻訳すればいいのか?
- デザインと統一感をどう保つか?
といった悩みを抱える担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、博物館の案内表示を多言語対応する際の基本的な考え方から、具体的な進め方、他館の成功事例、省コストでの対応方法までをまとめています。
「まず何から始めればいいの?」と迷っている方のために、実践的なヒントをお届けします。
この記事でわかること
- 博物館における多言語案内表示の重要性とその背景
- 多言語対応に関するよくある課題とその解決策
- 実際の博物館での多言語対応事例とその工夫
なぜ今、博物館に多言語案内表示が必要なのか?
近年、訪日外国人旅行者の増加に伴い、博物館における多言語対応の重要性が高まっています。
展示物の理解を深め、来館者の満足度を向上させるためには、わかりやすい案内表示が不可欠です。
特に、文化や歴史に関する展示が多い博物館では、専門用語や背景知識の違いから、外国人来館者が内容を理解しにくいケースも少なくありません。
そのため、多言語での案内表示を整備し、誰もが展示を楽しめる環境を整えることが求められています。
博物館によくある多言語対応の悩み
対応言語の選定に迷う
「英語だけで十分なのか、それとも中国語や韓国語も必要なのか」といった対応言語の選定に悩む施設は多いです。来館者の国籍や地域性を考慮し、優先順位をつけて対応することが重要です。
学術用語の翻訳が難しい
展示解説には専門的な用語が多く含まれるため、直訳では意味が伝わりにくいことがあります。来館者の理解を助けるためには、平易な表現や補足説明を加える工夫が必要です。
デザインとの調和が難しい
多言語対応を進める中で、案内表示のデザインが煩雑になり、展示の雰囲気を損なってしまうことがあります。統一感のあるデザインで、視認性と美観を両立させることが求められます。
多言語案内表示の基本ステップ【博物館編】
① 翻訳が必要なエリアの整理
館内で多言語対応が必要な箇所を洗い出します。展示キャプション、常設・企画展の説明文、非常口案内、トイレ、受付周辺など、来館者の動線を考慮して優先順位をつけましょう。
② 対応言語の決定
地域性や来館者データをもとに、対応すべき言語を選定します。例えば、東京国立博物館では、日本語、英語、中国語、韓国語の4言語で展示解説を行っています。
③ 翻訳の品質管理
専門用語や文化的背景を考慮し、直訳ではなく意訳を用いることで、来館者にとってわかりやすい解説を提供します。ネイティブスピーカーによる監修や、やさしい日本語の活用も効果的です。
④ デザインの統一
多言語表示を行う際は、フォントやレイアウトを統一し、視認性を高めることが重要です。東京国立博物館では、題箋と解説文を分け、各言語の情報を整理したデザインを採用しています。
⑤ フィードバックの導入
来館者からの意見や口コミを収集し、多言語対応の改善に活かします。例えば、東京国立博物館では、来館者の動線や反応を観察し、解説文の内容や配置を見直しています。
他館に学ぶ!博物館の多言語対応事例
東京国立博物館:来館者視点の解説文
東京国立博物館では、外国人来館者の視点を重視し、日本語の直訳ではなく、来館者の疑問に答える形で解説文を作成しています。例えば、仏像の解説では、「阿弥陀如来とは誰なのか」「なぜ体が金色なのか」といった疑問に答える内容となっています。
(出典:文化観光コーチングチーム「HIRAKU」|公式note)
広島平和記念資料館:17言語対応の解説
広島平和記念資料館では、英語、中国語、韓国語を含む17言語で展示解説を提供しています。翻訳には、各言語の専門家による監修を取り入れ、正確でわかりやすい表現を心がけています。
(出典:文化観光コーチングチーム「HIRAKU」|公式note)
奈良国立博物館:多言語音声ガイドの導入
奈良国立博物館では、日本語、英語、中国語、韓国語の4言語に対応した音声ガイドを導入し、来館者の理解をサポートしています。
(出典:スマホ音声ガイド研究所)
博物館でもできる、多言語化の省コスト対策
AI翻訳と専門家の併用
初期段階ではAI翻訳を活用し、最終的なチェックを専門家に依頼することで、コストを抑えつつ品質を確保できます。
デジタルコンテンツの活用
紙のパンフレットから、スマートフォンで閲覧できるPDFやWebコンテンツに移行することで、印刷コストを削減できます。
補助金・助成金の活用
文化庁や地方自治体が提供する補助金や助成金を活用することで、多言語対応の費用負担を軽減できます。
まとめ|「伝える力」で展示の価値を最大化する
多言語対応は、博物館の展示内容をより多くの人に伝えるための重要な手段です。言葉の壁を越えて、来館者が展示を深く理解し、満足度を高めることができます。
小さな改善から始めて、継続的に取り組むことで、博物館の魅力をより多くの人に伝えることができるでしょう。