
訪日外国人観光客の増加に伴い、多言語パンフレットの整備は観光施設にとって避けて通れないテーマとなりました。
「翻訳はAIで十分?」「英語以外は対応すべき?」「何をどこまで翻訳すればいいの?」といった悩みは多くの施設で共通です。
本記事では、観光施設の担当者向けに、多言語パンフレットの作り方、翻訳のポイント、制作時の注意点を実務目線でわかりやすくご紹介します。
この記事でわかること
- 多言語パンフレットが観光施設にとって重要な理由
- 訪問者ニーズに応じた翻訳・制作の進め方
- よくある課題と成功事例から学ぶ実践ポイント
なぜ今、多言語パンフレットが必要なのか
外国人観光客に“伝わらない”リスク
パンフレットが理解されなければ、施設の魅力は十分に伝わりません。「案内がわかりにくい」「翻訳が不自然」といった不満は、口コミや評価に直結します。
パンフレットは信頼と安心の入り口
言語の壁は、訪問者にとって不安材料のひとつです。多言語の案内があるだけで、「ここは外国人にもやさしい施設だ」と安心感を与えることができます。
施設体験の質を高めるツール
滞在中の迷いを減らし、スタッフ対応の負担も軽減できます。また、体験の満足度が上がれば、SNSやレビューでの好意的な反応にもつながりやすくなります。
多言語パンフレット制作の基本ステップ
1. 対応言語の選定
訪問者の国籍や来館データを参考に、対応すべき言語を選びます。英語は基本ですが、地域によって中国語(繁体字/簡体字)、韓国語、タイ語なども検討しましょう。
2. 翻訳範囲の整理
すべてを翻訳する必要はありません。以下の情報を優先的に対応しましょう:
- 施設概要・見どころ
- 利用案内・ルール
- アクセス・営業時間
3. 翻訳方法の選択
AI翻訳は便利ですが、文化や言葉のニュアンスが大切な部分はプロ翻訳が安心です。両者を使い分けるのが現実的です。
4. レイアウト・配布形式の工夫
多言語で文字量が変わるため、柔軟なレイアウト設計を。紙パンフレットに加えて、PDF+QRコードによるデジタル対応もおすすめです。
実務担当者がつまずきやすいポイントと解決策
翻訳のチェック体制が曖昧
ネイティブチェックが理想ですが、社内に対応人材がいない場合は、翻訳会社に「チェックのみ」を依頼する方法もあります。
予算に制限がある
すべてを多言語化するのは難しい場合、以下の工夫で対応可能です:
- 言語数を絞る(訪問者上位2〜3言語のみ)
- ピクトグラムや写真を活用
- 簡易表現でレイアウトを省スペース化
社内調整・承認フローに時間がかかる
制作目的や翻訳範囲、配布形式をあらかじめ文書化し、関係部署と共有すると合意形成がスムーズになります。
他施設の成功事例に学ぶ
京都市動物園:多言語パンフレットの導入で外国人来園者の利便性向上
英語・中国語(繁体字・簡体字)・韓国語のパンフレットや園内マップを整備し、外国人来園者でも迷わず楽しめるよう工夫されています。言葉の壁を取り払う取り組みは、利便性の向上につながっています。
(出典:京都市「多言語資料・冊子一覧」)
根津美術館:英語版パンフレットで国際的な来館者に対応
展示の内容を英語で紹介するパンフレットやチラシを提供し、外国人の来館者も作品の背景や意図を把握しやすい環境を整えています。必要な情報を過不足なく伝える設計が特徴です。
(出典:根津美術館「2022年度事業報告書」)
東京国立博物館:多言語パンフレットと解説で外国人来館者の理解を促進
英語やフランス語をはじめ、複数言語でのパンフレットや展示解説を提供。来館者が自国語で情報を得られる環境を整えることで、展示への理解が深まり、満足度の向上にも貢献しています。
(出典:文化庁「独立行政法人国立文化財機構の令和4年度における業務の実績」)
これらの事例は、多言語パンフレットが訪問者の理解を助け、施設の魅力を効果的に伝えるツールであることを示しています。自施設での導入を検討する際の参考として、ぜひご活用ください。
よくある質問(FAQ)
Q. どのくらいの情報を翻訳すべき?
A. すべてではなく、「最低限必要な情報」から対応すれば問題ありません。
Q. 翻訳の質を保つにはどうすれば?
A. 翻訳会社にチェックだけ依頼する方法や、実際の外国人来館者の声を活かした改善が効果的です。
Q. 成果をどう測定する?
A. 外国語レビューの増加、アンケート回答、スタッフ対応の軽減などが評価指標となります。
まとめ|多言語パンフレットは“伝わる”ための基本ツール
多言語対応は、訪問者へのやさしさであり、施設としての信頼性の証でもあります。
完璧を目指す必要はありませんが、ポイントを押さえて少しずつ改善することが、満足度と評価につながります。
まずは最も必要な部分から、一歩を踏み出してみましょう。