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【コラムVol.09】博物館の翻訳対応、どこから始める?“伝わる”多言語化の考え方

訪日外国人の増加にともない、博物館でも多言語対応が求められる時代になっています。展示解説、パンフレット、案内表示など、翻訳すべき場面は多岐にわたりますが、限られた人員や予算の中で「どの言語をどこまで対応すべきか?」という判断は簡単ではありません。

この記事では、博物館の広報・企画・運営担当者の方に向けて、来館者の傾向を踏まえた言語選定の考え方や、現場で失敗しないための翻訳対応の進め方をわかりやすく解説します。


この記事でわかること

  • 博物館が多言語対応を行うべき理由と背景
  • 訪日外国人の傾向を踏まえた対応言語の選び方
  • 他館で見られる翻訳対応の工夫
  • 翻訳プロジェクトを進める際の注意点と品質管理のコツ

なぜ博物館に多言語対応が求められているのか

博物館では、展示内容が専門的であるぶん「解説のわかりやすさ」が来館者の理解や満足度に直結します。特に外国人観光客にとって、日本語のみの展示や案内では不自由を感じやすく、場合によっては博物館の評価にも影響します。

文化庁の調査によると、外国人観光客の多くが「展示の翻訳がない」「案内表示がわかりづらい」と感じており、多言語化が不十分なことが満足度の低下要因になっていることがわかっています。

つまり、ただ翻訳すればよいのではなく、「誰に、どのように伝えるか」を意識した適切な多言語対応が必要です。


来館者データに基づく言語選定のポイント

翻訳対応の最初のステップは「来館者の属性」を把握することです。館内でのアンケート、チケット販売時の情報、観光協会や自治体の訪日客統計などをもとに、訪問者の国籍や地域の傾向を確認しましょう。

たとえば…

  • 都市部の博物館 → 欧米圏(英語)の来館者が比較的多い
  • 地方の歴史系博物館 → 中国語(簡体字・繁体字)・韓国語などアジア圏の団体来館が多い

これらの情報をもとに、最初に対応すべき言語を絞り込むことができます。また、地域のインバウンド施策(観光パンフレットや交通案内との整合性)を意識し、他施設との連携も重視すると、より効果的な発信が可能になります。


多くの博物館で見られる翻訳対応の工夫

国立歴史博物館の多言語展示

東京都内にある国立歴史博物館では、主要な展示に英語・中国語・韓国語の3言語対応を実施。翻訳だけでなく、音声ガイドやタブレット案内も導入することで、解説の「読み疲れ」を防ぎ、体験としての満足度を高めています。

地方博物館に見る、翻訳対応の現実的アプローチ

一部の地方の博物館では、来館者の多い時期や企画展に絞って多言語対応を実施。常設展では英語のみとし、繁忙期に限って他言語のパンフレットを配布するなど、予算に応じた柔軟な運用が工夫されています。

※この記事の内容は、文化庁・観光庁の公開資料および複数の博物館の広報情報をもとに編集したものであり、特定の施設を示すものではありません。


対応言語の優先順位と進め方

どの博物館でもまず対応すべき言語セットは以下の通りです:

  • 英語
  • 中国語(簡体字・繁体字)
  • 韓国語

これらは訪日客の大多数を占めるため、最初の優先対応言語と考えて問題ありません。施設の来館傾向や地域特性に応じて、タイ語・ベトナム語などの追加も検討しましょう。

ただし、翻訳言語を増やしすぎると、情報更新が追いつかず、誤訳や中途半端な表示が生じるリスクもあります。優先順位を決め、「最も必要とされる情報を、必要な言語で」届ける意識が重要です。


翻訳品質とチェック方法

せっかく翻訳しても、「読みにくい」「不自然」「誤解を招く」表現では意味がありません。特に展示解説のような文化的・歴史的な情報は、表現の正確さが求められます。

翻訳工程では以下の点に注意しましょう:

  • 重要コンテンツには専門の翻訳者+ネイティブチェックを必ず
  • 専門用語や漢字の読み、言葉のニュアンスなどは原稿段階で整理
  • 納品後の校正では「レイアウト崩れ」「表示漏れ」にも注意

最近では、AI翻訳と人力翻訳を組み合わせて使う事例も増えています。たとえば、AIで一括翻訳後にネイティブ校正者が確認・修正することで、スピードと品質の両立が可能になります。


まとめ|多言語対応は「伝わるかどうか」がカギ

博物館における多言語対応は、「翻訳すること」ではなく「伝えること」が目的です。来館者の傾向や展示の特性を踏まえ、必要な言語に、必要な内容を届けることが、満足度と再訪意向の向上につながります。

まずは自館のデータや実情をもとに、現実的かつ効果的な範囲で多言語対応をスタートしましょう。

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